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東京地方裁判所 平成2年(特わ)235号 判決 1990年6月15日

本籍

東京都渋谷区千駄ヶ谷四丁目一一番

住居

同都世田谷区岡本一丁目一八番の三

会社役員

若林政雄

昭和一一年二月七日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

検察官 渡辺咲子出席

主文

被告人を懲役一〇月及び罰金一五〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、埼玉県草加市内に居住し、株式会社初穂に勤務していたものであるが、自己が業務として取り扱った不動産取引に関して取引先から私的に謝礼金を得ていたところ、自己の所得を免れようと企て、右謝礼金を他人名義の領収書を使用して受領するなどの方法により所得を秘匿した上、

第一  昭和五九年分の実際総所得金額が四〇〇九万三〇〇〇円(別紙1の修正損益計算書参照)あつたのにかかわらず、右所得税の納期限である同六〇年三月一五日までに、埼玉県川口市青木二丁目二番一七号所轄川口税務署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで右期限を徒過させ、もつて不正の行為により、同五九年分の所得税額一六五〇万八九〇〇円(別紙2の脱税額計算書参照)を免れ

第二  昭和六〇年分の実際総所得金額が四四二九万二〇〇〇円(別紙3の修正損益計算書参照)あつたのにかかわらず、右所得税の納期限である同六一年三月一五日までに、前記川口税務署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで右期限を徒過させ、もつて不正の行為により、同六〇年分の所得税額一八二二万六三〇〇円(別紙4の脱税額計算書参照)を免れ

第三  昭和六一年分の実際総所得金額が六四九七万七五〇〇円(別紙5の修正損益計算書参照)あつたのにかかわらず、同六二年二月一二日、前記川口税務署において、同務署長に対し、同六一年分の総所得金額が一八八七万七五〇〇円で、これに対する所得税額が一三四万六二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により、同年分の正規の所得税額二八八七万六六〇〇円と右申告税額との差額二七五三万四〇〇円(別紙6の脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する平成二年二月二四日付、同月一四日付(一七丁綴りのもの)、同月一六日付、同月一九日付各供述調書

一  大蔵事務官作成の謝礼金収入調査書、分配金調査書

一  片桐忠夫(謄本)、細川幸雄の検察官に対する各供述調書

一  検察事務官作成の報告書及び電話聴取書

判示第一、第二の各事実につき

一  大蔵事務官作成の給与収入調査書、給与所得控除調査書、所得控除額調査書、源泉徴収税額調査書

判示第二、第三の各事実につき

一  被告人の検察官に対する平成二年二月二〇日付供述調書

一  検察官作成の報告書

判示第一の事実につき

一  被告人の検察官に対する平成二年二月一八日付供述調書

判示第三の事実につき

一  被告人の検察官に対する平成二年二月二一日付供述調書

一  川口税務署長桑野充伸作成の証明書

(法令の適用)

被告人の判示各所為は、いずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、それぞれ情状により罰金につき同条二項を適用した上懲役刑と罰金刑とを併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、罰金刑については同法四八条二項により各罪につき定めた罰金の合算額の範囲内で、被告人を懲役一〇月及び罰金一五〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用して、この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 松浦繁)

別紙1

修正損益計算書

若林政雄

自 昭和59年1月1日

至 昭和59年12月31日

<省略>

別紙2

脱税額計算書

昭和59年分 若林政雄

<省略>

別紙3

修正損益計算書

若林政雄

自 昭和60年1月1日

至 昭和60年12月31日

<省略>

別紙4

脱税額計算書

昭和60年分 若林政雄

<省略>

別紙5

修正損益計算書

若林政雄

自 昭和61年1月1日

至 昭和61年12月31日

<省略>

別紙6

脱税額計算書

昭和61年分 若林政雄

<省略>

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